ホルムズ海峡を通る船舶から通行料を取る——イランが検討しているとされるその一手を、世界最大の海運監視機関トップが「危険かつ容認できない前例」と断じた。Bloomberg が2025年4月9日付で報じた。

世界の原油20%が通る「咽喉部」で何が起きているか

ホルムズ海峡は、サウジアラビア・UAE・クウェート・イラクが産出する原油を、アジアや欧州へ送り出す唯一の出口に近い存在だ。世界の海上原油輸送量のおよそ20%がここを通過する。その数字だけでも、この水道がいかに代替不能かがわかる。

イランはこの海峡に面する国として、以前から「封鎖」をちらつかせてきた。ただ今回の動きは封鎖より巧妙で、「料金を払えば通れる」という形式を取っている。国際法の観点ではグレーゾーンに踏み込む話らしく、それがIMO(国際海事機関)を動かした背景にあるとみられる。

「ホルムズ海峡の通過にイランが通行料を課すことは、危険かつ容認できない前例となる」——IMOトップ(Bloomberg報道より)

「前例」という言葉を使ったのは、単なる外交レトリックじゃない。IMOが本当に恐れているのは、この一件が呼び水になるシナリオだったと読める。

マラッカ、ジブラルタル……「通行料ドミノ」が倒れる日

イランの徴収が既成事実になった場合、他の沿岸国が黙っているかどうか。マラッカ海峡はインドネシア・マレーシア・シンガポールの三カ国が接する、世界最繁忙の海峡のひとつ。ジブラルタルはスペインと英国が領有権を共有する要衝だ。「うちも取れるんじゃないか」という発想が各国政府内で生まれても、不思議じゃない。

海洋法上、国際航行に使用される海峡では「通過通航権」が認められており、沿岸国が一方的に料金を課すことは原則として認められていない。ただし「認められていない」と「やった国に実際に制裁できる」は別の話で、そこがIMOの焦りにつながっているらしかった。

エネルギー輸入を中東依存する日本にとっても、他人事じゃない。タンカーへの追加コストは最終的に輸入価格に乗る。静かに、でも確実に影響が届く話だ。

この先どうなる

IMOの警告がイランの動きを止めるかどうか、現時点では不透明なままだ。米国とイランの核交渉が進むか停滞するかが、この問題の行方にも直結するとみられている。交渉が決裂した場合、イランが「ホルムズ通行料」を交渉カードとして本格的に持ち出す可能性は低くない。

国際社会が「前例を作らせない」圧力を維持できるか、あるいは誰かが最初に料金を払う判断をするか——その分岐点が、海の秩序を決める。しばらく目が離せない案件だ。