米CPI 4月が3.4%——数字は下がった。でも、その「わずかな改善」に市場が沸いたかというと、まったく逆だった。FRBが目指す2%との差は依然1.4ポイント。この壁が思ったより厚い、というのが今回のデータを見て最初に引っかかったところだ。

コアインフレが「高止まり」している、というのが問題の核心

エネルギーと食品を除いたコアCPIも、なかなか下がらない。ガソリン価格が落ち着いても、サービス価格や住居費が粘り強く上昇を続けている状況だ。つまり「エネルギーが上げていた分が一段落しただけ」という読み方もできる。全体のインフレ率が3%台後半から3%台前半に下りてきたとはいえ、コアインフレの高止まりが続く限り、FRBはおいそれと動けない。

米労働統計局のデータによると、4月の米消費者物価指数は前年比3.4%上昇。3月の3.5%からわずかに低下した。(Financial Times / US Bureau of Labor Statistics)

パウエル議長はずっと「データ次第」と繰り返してきた。今回のデータが出て、市場では「9月利下げも怪しい」という声が増えている。年内1回あるかどうか、というのが現時点のコンセンサスに近いらしい。FRBの利下げ時期をめぐる読み合いは、まだしばらく続きそうだ。

ドル高が長引くと、火の粉はアメリカ以外にも飛ぶ

ここで見落としがちなのが、ドル高の波及効果だ。FRBが金利を高く維持し続ければ、ドルに資金が集まりやすい。新興国にとってこれは厄介で、ドル建て債務の返済コストが膨らんでいく。アルゼンチンやトルコのような国は以前も通貨危機に追い込まれたことがあり、今回も同様のリスクがくすぶっている。「アメリカのインフレ問題」が気づけば世界の資金フローを揺さぶる——そういう構図になりつつある。
コアインフレの高止まりが続く中、利下げを見越して動いていた投資家には痛い現実だったかもしれない。

この先どうなる

次の焦点は5月のCPIと、6月のFOMC(連邦公開市場委員会)だろう。コアインフレが明確に鈍化しない限り、FRBが利下げに踏み切る根拠は積み上がらない。仮に年内1回の利下げがあるとしても、それは「インフレに勝った」宣言というより「状況がやっと許した」程度の話になりそうだ。市場の期待が後退するたびにドルが底堅さを保ち、その結果が新興国への圧力として出てくる——というサイクルは、少なくとも数ヶ月は続くとみておいたほうが良さそう。インフレとの戦いのゴールテープは、まだ先にある。