JDヴァンス副大統領が、戦闘が続く中東情勢のさなか、イスラマバードへ降り立った。ホワイトハウスが発表したのは、副大統領自らを代表団長とするイランとの直接交渉——しかもテヘランはその瞬間、「停戦違反が起きている」と訴えていた。タイミングが、あまりにも不穏だった。

現役副大統領が核交渉に出る、それ自体が前例なし

過去の米イラン交渉を振り返ると、副大統領がテーブルの前面に立ったケースはほぼ見当たらない。特使や国務長官が矢面に立つのが通例で、副大統領の直接関与は政治的リスクを意味する。それをあえて選んだということは、トランプ政権が「本気の決着」を狙っているとも読めるし、逆に「交渉決裂の責任を副大統領に被せられる構図」という見方も浮かんでくる。

Bloombergが速報で伝えたこの動きは、米イラン直接交渉としては近年で最もハイレベルな接触になる。イスラマバード協議の場所にパキスタンの首都が選ばれた点も気になるところで、中立的な第三国を介さず、米側が「足を運ぶ」形を選択したのは、外交上の譲歩とも取れる。

「ホワイトハウスは、中東での戦闘が続く中、JDヴァンス副大統領を代表団長としてイスラマバードに派遣し、イランと直接交渉を行うと発表した。」(Bloomberg、2025年4月9日)

ただ、停戦違反をめぐるテヘランの訴えが交渉開始前から飛び出しているのは、ちょっとした地雷を踏んでいる状況に近い。「話し合いに来た相手が違反している」という印象をイラン国内に植え付けることで、強硬派に対する国内向けの言い訳を先に確保しておく狙いがあるとすれば、したたかな計算でもある。

ホルムズを挟んだ市場が、交渉テーブルの結果を待っている

エネルギー市場への影響は、見落としがたい。イランは世界有数の原油輸出国であり、ホルムズ海峡は世界の石油輸送量の約2割が通過する要衝だ。米イラン直接交渉が実質的な合意に向かえば、制裁緩和観測が先行し原油価格に下押し圧力がかかる可能性がある一方、決裂すれば供給リスクが一気に高まる。アジア向けのサプライチェーンも同じ海峡を通るだけに、日本を含む輸入国にとっても他人事ではない。

過去のバズを見ると、「イスラエルのテヘラン空爆」報道が3000再生超えを記録したのは記憶に新しい。今回の交渉局面はその続編ともいえる展開で、軍事行動と外交交渉が同時並行で走っている状態——これは緊張が高まりやすい。どちらかの動きが予期せず先走ると、もう一方が瓦解するリスクがある。

この先どうなる

イスラマバード協議で何らかの枠組み合意が出るのか、それとも「協議したが決裂」という最悪のシナリオになるのか——数日以内に方向性は見えてくるとみられる。注目すべきは、停戦違反をめぐるテヘランの発言がどこまでエスカレートするか、そしてイスラエルが「交渉中」にどう動くかだ。米国がヴァンスを送り込んだ以上、外交的な失敗は政権にとって痛手になる。逆に言えば、それだけ本気の賭けに出たってことでもある。次の48時間、目が離せない。