ホルムズ海峡封鎖が、ついに「仮定の話」ではなくなった。イランが同海峡を通過する全船舶に対し、イラン領海内への航路変更を要求。複数の船舶運航会社が通航を見合わせ、タンカーの滞留が急速に広がっているとロイターが報じた。世界の原油取引量の約20%、LNGの12%が通過するこの水路が、今まさに詰まりつつある。

なぜ今なのか――トランプ期限とタンカー滞留の連鎖

背景にあるのは、トランプ政権がイランに突きつけた核合意をめぐる最終期限と、米軍の増強展開だ。圧力をかけられたイラン側が「海峡の管理権」をちらつかせることで、交渉カードとして使おうとしているとみられている。実際、今回の警告はいきなり軍事衝突に踏み込んだわけではなく、あくまで「航路変更の要求」という形をとっている点が引っかかった。正面衝突を避けながら、じわじわと圧力をかける戦術らしい。

「イランはホルムズ海峡を通過する船舶に対し、イラン領海内に留まるよう警告し、世界最重要の石油咽喉部における通航量を事実上の停止状態に追い込んだ」(Reuters、2026年4月9日)

原油タンカーの通航停止が長引けば、影響は即座に数字に出る。日本の原油輸入の約9割は中東からで、そのほぼ全量がホルムズを経由する。韓国・インドも事情は同じ。数日の滞留で済めばまだいいが、1週間を超えると備蓄の取り崩しが始まり、市場心理が一気に傾く展開も十分ありえる。

原油価格はどう動くか――市場が読んでいる「3つのシナリオ」

市場はすでに反応を始めていた。封鎖懸念が浮上するたびに原油価格は急変動してきた歴史があり、今回も例外ではない。トレーダーたちが想定しているシナリオはざっくり3つ。①外交決着で数日以内に通航再開、②イラン船舶警告が長期化してタンカー迂回ルート(ケープ経由)が常態化、③米軍が実力行使に踏み切り本格的な海峡危機に発展――この3番目を市場は「低確率だが無視できない」と値付けしているようだった。イラン船舶警告が続く限り、原油の先物市場は荒れやすい状態が続くとみられている。

この先どうなる

焦点は今後数日の外交交渉の行方になりそうだ。トランプ政権の期限に対してイランがどう応じるか、それ次第でホルムズの状況は大きく変わる。通航見合わせを続ける運航会社が増えれば、事実上の封鎖として国際社会が認定せざるを得ない局面も出てくるかもしれない。日本政府や資源関係者が今週末どう動くか、そこが当面の観察ポイントになるだろう。ただ、過去の事例を振り返ると、ホルムズ危機は「完全封鎖」には至らずに終わるケースがほとんどだった。今回もそうなるかどうか――それは誰にも断言できない状況が続いている。