イスラエルとレバノンの直接交渉合意が発表された瞬間、ウォール街は迷わず買いに走った。ネタニヤフ首相が表明したのはあくまで「交渉に入る」という一点だったにもかかわらず、だ。米国株は即日急伸。その背景には、米・イラン間で水面下を流れる2週間停戦構想への期待も重なっていた。
ネタニヤフが動いた日、市場が先に結論を出した
調べてみると、今回の動きには二つの流れが絡み合っているのがわかった。一つは、イスラエルとレバノンの直接交渉というニュース単体。もう一つは、米・イラン停戦合意の交渉が続いているという観測だ。
市場はこの二つを「和平への一直線」として読んだ。でも中東の交渉史を振り返ると、そこには引っかかる部分がある。「直接交渉に合意した」という言葉は、過去にも実質的な膠着状態をいったん棚上げするときに使われてきたフレーズだった。合意≠停戦、ということは歴史が何度も教えてきた話だ。
「ベンヤミン・ネタニヤフ首相はイスラエルがレバノンとの直接交渉に合意したと述べ、米・イラン間の2週間停戦合意への楽観論を押し上げた」(Bloomberg)
Bloombergのこの一文、よく読むと「楽観論を押し上げた」という表現にとどまっている。停戦が決まった、とは書いていない。そこがポイントだろう。
原油・ドル・地政学リスク、3つが同時に揺れる局面で何が起きるか
今の相場環境を見ると、原油価格、ドル指数、そして地政学リスクのプレミアムが三つ同時に動き始めている局面だとわかった。停戦が本物として定着すれば、ペルシャ湾周辺の緊張緩和は世界のサプライチェーンに速やかに効いてくる。エネルギーコストが下がれば、インフレ圧力にも影響する。
一方でBloombergが指摘しているのは、合意が崩れたときの反動リスクだ。「今の上昇幅を超える下落が来る可能性がある」というのが報道の読みらしい。市場が先取りした分だけ、失望売りの落差も大きくなる、という話だ。ネタニヤフ中東和平というキーワードに市場が過剰反応しているとすれば、その反動は今の上昇より鋭くなる可能性がある。
この先どうなる
直近の焦点は二つ。米・イラン停戦交渉が「2週間」という期限つきの枠組みで実際に動くかどうか、そしてイスラエルとレバノンの直接交渉が具体的な議題設定まで進むかどうかだ。どちらも「合意した」段階から「合意を維持する」段階へ移れるかが問われる。市場はすでに楽観シナリオを株価に織り込み始めた。これが正しければ、中東発のポジティブサプライズとして世界経済にじわじわ効いてくる。外れれば、今週の上昇は「売り場」だったということになる。どちらに転ぶか、次の2週間が最初の答え合わせになりそうだ。