ホルムズ海峡の通行料徴収疑惑が浮上した瞬間、エネルギー市場の空気が変わった。世界の原油輸送量の約20%、LNG貿易の約30%が通過するこの狭い水道で、イランがタンカーに金を要求し始めたとの報告が出てきたのだ。事実なら単なる挑発じゃない――国際海洋法の「通過通航権」を真正面から踏みにじる行為になる。
トランプの4語が示した「レッドライン」
2025年5月、ドナルド・トランプはTruth Socialにこう書き込んだ。
「イランがホルムズ海峡を通過するタンカーに通行料を課しているとの報告がある――彼らはやめた方がいい!」
英語原文では「They better not」。たった4語だが、ここに込められたニュアンスは重い。「better not」は警告というより、結末を予告するような言い回しだ。軍事オプションをちらつかせているとも読めるし、経済制裁の強化を示唆しているとも取れる。いずれにせよ、トランプがこの問題を「交渉カード」として扱う気がないことだけは伝わってくる。
サウジ、日本、韓国――通行料で直撃される国々
ホルムズ海峡の地政学的な重みは数字が示している。サウジアラビア、UAE、クウェートの輸出原油のほぼ全量がここを通る。日本の原油輸入の約9割、韓国も同水準だ。もしイランが本当にタンカーへの課金を常態化させれば、通過コストは輸送費に上乗せされ、最終的には各国のガソリン価格や電気代に波及しかねない。
実はイランは過去にもホルムズ海峡での「嫌がらせ」を繰り返してきた。2019年にはタンカーを拿捕し、2023年にも米軍との緊張が高まった局面があった。ただ、今回の「通行料徴収」という手法は新しい。拿捕より穏便に見えて、むしろ慢性的な圧力として機能する恐れがある。イラン タンカー 封鎖のような直接的な実力行使ではなく、「合法性の衣をまとった実効支配」を狙っているとしたら、より厄介かもしれない。
この先どうなる
トランプ イラン 警告の構図は、核合意交渉の行方と切り離して考えられない。現在、米国とイランは間接協議を続けているとされ、この投稿がその交渉を加速させる圧力なのか、それとも決裂の前兆なのかは今のところ読めない。
エネルギー市場が注目しているのは、米海軍の動向だ。ホルムズ海峡には平時から米第5艦隊が展開しており、タンカーへの護衛強化に動くかどうかが次の焦点になりそう。ただ、軍事的エスカレーションが起きれば原油価格への影響は一気に跳ね上がる。通行料徴収の報告が「事実か否か」の確認すらまだ終わっていない段階で、市場はトランプの4語だけを手がかりに動いている。不確実性そのものが、今この海峡で最も流通しているものかもしれない。