ホルムズ海峡封鎖が続いたまま、原油価格は数時間のうちに2020年以来最大級の急落と急反発を往復した。相場が乱高下するのは珍しくない。ただ今回の動きは、単なる需給の揺らぎとは少し異なって見えた。

わずか数時間で急落→反発、市場が映した「2つのシナリオ」

ブルームバーグが4月8日に報じたところによれば、急落の引き金となったのは停戦交渉への期待感だったらしい。ところが海峡が依然として閉じられているという現実が確認されると、買い戻しが入って価格は反発に転じた。

市場が「停戦で供給回復」と「封鎖継続で供給危機」という正反対のシナリオを同時に織り込もうとした結果、乱高下が起きたと見るのが自然じゃないか。どちらかが正しければ相場はそちらに動き続けるはずなのに、半日で両方向に走ったわけだから、要するに誰も確信を持っていない状態ってこと。

「ホルムズ海峡が封鎖されたまま、2020年以来最大の下落後に原油価格が反発した」(Bloomberg、2026年4月8日)

ここで引っかかったのは数字だ。世界の石油輸送量の約20%がホルムズ海峡を通過している。サウジアラビア、UAE、イラク、クウェートの輸出原油のほぼすべてがこの海峡を経由する。日本の原油輸入の約9割は中東依存で、その大半がこのルートを通る。海峡が数日閉じるだけで、アジアの備蓄消費が始まる。

日本のガソリン代より先に効いてくる「コスト圧力の連鎖」

エネルギー価格が不安定になると、まず打撃を受けるのは輸送コストと電力コストだ。物流、食品、外食、観光——サービス業ではすでにコスト増の兆候が出始めていたところに、原油の乱高下が重なれば企業の価格転嫁の判断が急がされる。

各国中央銀行にとっても頭が痛い展開だった。利上げで需要を抑えてもエネルギー供給側のショックは止まらない。かといって緩和寄りに傾けば、コストプッシュ型のインフレを放置することになりかねない。原油価格の中東エネルギー危機的な乱高下が、金融政策の選択肢を狭めていく構図が改めて浮かんだ。

この先どうなる

焦点は封鎖がいつ解けるかではなく、解けるかどうかが本当に不透明なままという点にある。停戦協議の行方次第で原油価格の急落・反発は繰り返される可能性が高く、市場のボラティリティは当面続くとみておいた方がよさそうだ。

日本にとっての現実的なリスクは、備蓄の取り崩し期間が長引いた場合の輸入コスト上昇と、それに連動した物価への波及だ。ホルムズ海峡封鎖が数週間単位に延びれば、家計が気づく前に企業側の値上げラッシュが先に来るだろう。「相場の話」が「生活の話」に変わるまでの時間は、思ったより短い。